地方自治体に対し、より一層の多重債務対策の充実を求める決議

  1. 昨年12月、深刻化する多重債務問題の解決のため、貸金業法等の法律が大改正され、これを受けて、去る4月20日、政府の多重債務者対策本部は、同本部に設置された有識者会議の諮問をもとに、「多重債務問題改善プログラム」を策定した。

     同プログラムはまず、丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化を地方自治体に求めている。これは、上記有識者会議の「相談窓口等に主体的にアクセスできているのは2割程度で、残りの8割をどのように掘り起こして、問題解決に導くかが重要」との認識に基づくものである。

      ここで、残りの8割の掘り起こしが重要なのは、多重債務者の大部分が、無効なグレーゾーン金利の返済に苦しみながらも、貸金業者の大量かつ巧みなCMや過剰貸付体質・苛酷な取立のもと、「借りたものは返す」のが当たり前との思いで、それが法的に必ず解決することを知らない、知っていても相談窓口がどこにあるかも分からず、誰にも相談できない状態におかれていることにある。
     
  2. このような状態におかれている多重債務者発見の端緒の多くは、住民と身近に接する機会の多い地方自治体が握っていると言っても過言ではない。貸金業者の苛酷な取立に晒された多重債務者は、比較的取立の緩やかな公共料金よりも貸金業者への高利の支払いを優先しがちであるところ、地方自治体は、公営住宅の使用料や保育料などを滞納している住民に、バラバラに督促するのでなく、その住民の立場で滞納の原因を尋ねてみることができるのである。ここでその原因が多重債務であれば、専門の相談窓口に速やかに誘導することにより解決への第一歩が始まるのである。

  3. 長野県・岐阜県・秋田県や鹿児島県奄美市・岩手県盛岡市・滋賀県野洲市など既にこのような取り組みを始めていた自治体もあったが、近時上記政府の取り組みを受けて、各自治体は多重債務者対策協議会を結成するなど、陸続と取り組みを始めている。しかし、問題の認識の程度や取り組みの徹底さにおいて未だ不十分な自治体が多い。

     このような取り組みは、住民の福祉の増進を図ることを目的として存立する地方自治体の存在意義にも適うものであるし、ひいては、納付率の向上や消費支出の増加などを通じて地域経済の活性化をも期待できるものである。

  4. そこで、全国で230万人いるといわれる多重債務者一人一人の救済のため、各地方自治体に対し、
    1. 専門相談窓口を速やかに設置し、これを軸に庁内の各部署を結ぶネットワークを作り、多重債務者の発見・誘導体制を確立すること

    2. 多重債務者救済にあたっている弁護士会・司法書士会・被害者の会など、外部の諸団体を交えたネットワークを作り、徹底的な多重債務問題解決のための枠組みを確立すること

    3. 多重債務問題解決の仕組みにつき、市区町村住民に徹底的に広報すること

    を求めるとともに、我々もこれに対して最大限の協力を惜しまないことを、ここに表明するものである。


2007年9月30日 第1分科会提案
第27回全国クレ・サラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in滋賀 参加者一同