地方自治体に対し、さらなる多重債務対策の充実を求める決議

  1. 平成18年12月、社会問題として深刻化する多重債務問題の解決のため、貸金業法等の法律が大改正され、これを受けて平成19年4月20日、政府の多重債務者対策本部は、同本部に設置された有識者会議の諮問をもとに、「多重債務問題改善プログラム」を策定した。
    同プログラムはまず、丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備・強化を地方自治体に求めている。これは、上記有識者会議の「相談窓口等に主体的にアクセスできているのは2割程度で、残りの8割をどのように掘り起こして、問題解決に導くかが重要」との認識に基づくものである。

    ここで、掘り起こしが重要なのは、多重債務者の大部分が貧困を背景に、無効なグレーゾーン金利の返済に苦しみながらも、貸金業者の大量かつ巧みな宣伝や過剰貸付体質・苛酷な取立のもと、「借りたものは返す」との思いで、ひらすらあてどもない返済を続け、肉体的・精神的に次第に追い込まれつつも、それが法的には必ず解決することを知らないか、知っていても相談窓口がどこにあるかも分からないため、誰にも相談できない状態におかれ孤立化していることにある。

    そして、その掘り起こしから問題解決まで、地方自治体において主要な役割を果たすことが求められているのは、まず掘り起こしの面では、地方自治体は住民と身近に接する様々な部門を有しているからであり、問題解決の面では、地方自治体は、生活困窮に陥った多重債務者の真の意味での生活再建へ向けての多様なチャンネルを有しているからである。

  2. 上記プログラムを受けて昨年末までに、全都道府県に多重債務者対策協議会が設置され、いよいよ自治体による本格的な「多重債務対策」が始まることになった。そして、遅くとも、改正貸金業法の完全施行時(平成21年末頃)には、「日本全国どこの市町村に行っても適切な対応が行われる状態」の実現を目指すことになった。

    しかし、このような取り組みの現状は、各地でばらつきがあり、特に市町村レベルでは、消費生活相談窓口以外の部署での多重債務者の発見・誘導の面や多重債務者の生活再建へ向けた庁内各部署間の連携という面で十分とはいえない。

  3. 行政の多重債務対策は、人を死の淵から救い出す仕事であり、当の職員・相談員が命の恩人として感謝されるだけでなく、行政と地域住民の信頼の絆が深まり、住民が生活再建を果たすことにより、公的費用の納付率の向上や消費支出の増加がもたらされ、ひいては地域経済の活性化につながる可能性のある施策である。

  4. そこで、未だ相談窓口にたどり着いていない多重債務者一人一人の救済のため、各地方自治体に対し、多重債務者が、貧困を背景にして、貸金業者の大量宣伝・過剰貸付・苛酷な取立という構造のもとに、誰もが陥る可能性のある被害者であるとの認識のうえに立って、
    1. 庁内の各部署における多重債務者の発見から専門相談窓口への誘導の体制、あるいは、多重債務者の生活再建へ向けた庁内各部署間の連携を確かなものとするため、庁内研修等を実施することにより、一層の意思統一を図ること。
    2. 庁外の諸機関との連携にあたっては、弁護士・司法書士の専門家に加えて、被害者の会等も交えたネットワークを作り、徹底的な問題解決のための枠組みを確立すること
    3. 多重債務問題解決の仕組みにつき、市区町村住民に対し工夫を凝らした徹底的な広報をすること。
      を求めるとともに、我々もこれに対して最大限の協力を惜しまないことを、ここに表明するものである。
      以上、決議する。

2008年11月8日
第28回全国クレサラ・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in秋田
第1分科会(行政の多重債務対策)参加者一同