第27回 全国クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会in滋賀

集会宣言

2006年12月、我々は、悲願であった、貸金業法の改正を勝ち取った。利息制限法を無視した高金利と、返済能力をかえりみない過剰融資は、多重債務問題の根本原因である。今回の法改正は、これらの原因を直接規制する、画期的な成果であった。この改正によって、今後、新たな多重債務者の発生は、大きく抑制できるはずである。
しかしながら、この法改正によって、多重債務問題が、全て解決できるわけではない。我々は、本日、滋賀県において、第27回 全国クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会に集結し、法改正後の課題として、以下の取り組みが必要であることを確認した。

  1. 「現代の貧困」とのたたかい

    近年、政府は、市場原理の効率性を過大評価し、規制緩和と称して、経済への政策的介入を縮小しつづけた。その結果、所得の格差は拡大し、生活の維持にも困窮する低所得の階層が増大している。

    各種の景気指標は好転しているようにみえるが、生活の質は、それを反映しているとはいい難い。非正規労働者は増加し、生活を維持することすら困難な労働条件が広がっている。生活保護世帯も増加しているし、高齢者、障害者、母子家庭など、弱いところに負担が集中する傾向が強まっている。

    これに対し、生活保護をはじめとするセーフティネットは脆弱である。経済的困窮ゆえに、サラ金に頼ろうとする資金需要は、依然として大きい。この「現代の貧困」を社会から追放することこそ、法改正後の、多重債務対策の取り組みの中心的課題である。

  2. 行政による多重債務対策の充実

    いうまでもなく、多重債務問題は、単に、借りる側の個人的な問題ではない。貸金業者が、自らの利益のために、市民の生活の困窮につけ込むという構造的な問題である。しかも、多重債務は、家庭の崩壊や自殺、犯罪など、社会にとっても大きな負の効果をもたらす。今回の法改正の運動を通じて、多重債務の問題が、政治と行政の課題であることが、広く認められるようになった。

    行政の相談窓口の充実、各行政機関相互の有機的な連携など、行政の取り組みは、まだ始まったばかりである。多重債務者本人やその家族に対する精神的なケアが必要な場合もある。我々は、行政のこうした動きに協力を惜しまないし、行政の対応が形骸化することのないよう、常に監視していかなければならない。

  3. ヤミ金の撲滅

    また、再び活発化の動きをみせるヤミ金の撲滅も、重要な課題である。せっかくの高金利引き下げとサラ金市場の縮小化を、ヤミ金のビジネスチャンスにしてはならない。改正法の本体施行までに、ヤミ金を完全に制圧しなければ、サラ金業界がこれを金利再引き上げの口実にすることは目に見えている。我々は、ヤミ金の徹底した取締りを求めるとともに、ヤミ金被害者を孤立させないための運動に取り組む。

  4. 公的融資制度・生活保護制度の充実

    生活費の不足は、どんな市民にも生じることである。一定の所得がある者の資金需要に対しては、低利の公的融資制度を用意し、所得が不足する者に対しては生活保護を充実させるという対応が必要である。

    これまで、この種の融資制度はほとんど整備されてこなかった。サラ金は、そこにつけ入り、高利で貸付を行ってきた。資金需要者の立場にたった福祉的な融資制度の充実は、多重債務防止の必須の条件である。生活保護制度の現状は、あまりにもひどいものである。

    生活保護水準未満での生活をしている世帯がたくさんあるにもかかわらず、制度はそれを十分に捕捉していない。生活保護申請書を渡さずに門前払いする「水際作戦」も横行している。
    過日、北九州市では、生活保護を辞退させられた受給者が、餓死した事例もある。生活保護制度を正常化させることは、喫緊の課題である。

  5. クレジット過剰与信被害撲滅のための割賦販売法改正の実現

    昨年改正された貸金業法においては、サラ金等貸金業者について年収の三分の一基準を原則とする過剰融資規制が導入された。

    しかし、サラ金と並んで、多重債務の大きな原因となってきたクレジットについては、今なお過剰与信規制が事実上存在しない状態が放置されている。貸金業法改正により貸金業者への規制が厳格化された結果、さらにクレジットをきっかけとする多重債務者が増加する可能性も大きいのであるから、多重債務被害根絶のためには、クレジット過剰与信を実効的に禁止する割賦販売法の改正が行われなければならない。

    また、クレジットの過剰与信による被害としては、このほかにも、次々販売被害に伴ってクレジット会社が垂れ流し的な与信を行い、被害をより増大し深刻化させているケースがあり、「次々販売型」の過剰与信被害と呼ばれている。このような次々販売型のクレジット過剰与信被害を無くすためにも、実効的な過剰与信規制の導入は不可欠のものである。また同時に、悪質商法を行った販売店とクレジット会社とが被害者に対し共同して既払金の返還義務を負うとする共同責任規定を導入することで、このような被害をより効果的に予防・救済できると考えられる。

    したがって現在改正が検討されている割賦販売法について、上記のような実効的な過剰与信規制並びに共同責任規定を導入することが、極めて重要な課題であるといえる。

  6. その他の諸課題

    このほかにも、取り組むべき課題は多い。家計管理についての消費者教育も、公的な形で実施されるべきであるが、現段階ではほとんど行われていない。利息制限法の金利も、経済全体の中ではなお異常な高利であり、その引き下げが必要である。過払い金を取り戻すことは、多重債務者の生活再建のための重要な権利である。これは、サラ金の違法利得を吐き出させ、改正法の本体施行を前倒しで実施させるのと同様の意味を持つ。

 

我々は、法改正後の新たな運動として、この集会で明らかにされた、以上の諸課題の解決に取り組むことをここに宣言する。

2007年9月30日
第27回 全国クレジット・サラ金・商工ローン・ヤミ金被害者交流集会
参加者一同